Ultimaker Cura 5.0-beta版公開 一足先に新機能を体験

3Dプリンター

2022/4/21にCuraのバージョン5.0のベータ版が公開されました。正式版の最新である4.13.1が公開されたのが2022/1/28だったので最近の更新ペースからすると少し遅めのリリースですが、その分、大幅で魅力的な変更が加えられているようです。正式版リリースの前に少しだけ覗いてみます。

“Arachne engine”の採用

おそらくこれが今回の目玉です。今までもベータ版としてArachneエンジンを採用したArachne Engine Beta2がリリースされていましたが、そのArachneエンジンが正式採用されました。このエンジンの最大のポイントはライン幅を可変出来るところにあります。また、モデルの角におけるパスの生成アルゴリズムも変わっているようですので、可変線幅との相乗効果でより正確で強いモデルを印刷できると思います。そのへんの変化を簡単に見てみます。

可変線幅の効果 その1

ラインの幅が可変出来ると何が良いのでしょうか?まず、今までのパスを見てみます。以下の図は壁の厚さが1.8mmのモデルをライン幅0.4mm、ライン数3の設定で印刷した物です。本来外壁(赤)と内壁(緑)のみで構成されるはずですが、壁の厚みがライン幅の倍数ではないため、発生した隙間をスキン(黄)によって埋める動作になります。その際、不連続なラインで埋められる場合があります。これはごく小さな隙間が残ると共に印刷時に断続的な動きとなり、不要な振動や騒音が発生してしまいます。

Cura 4.13.1 でスライスした時のラインの様子。

新しいエンジンを用いて全く同じモデルを同じ設定でスライスしたものが以下の図です。ライン幅が動的に可変出来ますので、変な断続がなくモデルの肉厚1.8mmを実現しています。これが可変線幅の一つ目のメリットです。

Cura 5.0-beta でスライスした時のラインの様子。

可変線幅の効果 その2

そしてもう一つのメリットがより薄い壁の印刷が出来ることです。以下のモデルの壁の厚さは1.8mmから0.2mmまで連続的に変化しています。印刷時のライン幅の設定は0.4mmです。旧エンジンでは設定ライン幅より薄くなると印刷を放棄します。

Cura 4.13.1 でスライスした時のラインの様子。印刷されない部分が発生。

それに対し新エンジンでは限界はあるもののある程度薄い物まで印刷できます。

Cura 5.0-beta でスライスした時のラインの様子。薄い壁も再現できています。

設定項目の追加

プリント設定に可変線幅をコントロールするための新たな項目が増えました。ベータ版ですので新設の部分は翻訳されていませんが、何となく何を設定するのか分かるのではないでしょうか。こちらの詳しい解説は5.0の正式版がリリースされてから行う予定です。

なお、4.13.1 と比較すると設定項目は増えていますが、Arachne Engine Beta2 と比較すると減っている項目も見られます。
例えば、[Variable Line Strategy] という項目が5.0-betaには見当たりません。これは、線幅の変動を壁中央部のラインのみで行うのか、外壁、内壁で均等に変動させるのかなどの設定でした。

Arachne Engine Beta2には存在していた [Variable Line Strategy]

また、[Wall Ordering] の “Center Last” が選択できなくなっています。

Arachne Engine Beta2では “Center Last” がありました。
5.0-betaでは二つの選択肢となっています。

結果的に4.13.1までにあった [外壁優先] と同じじゃんと思ってしまいました。

コーナーでのパスの違い

Arachneエンジンのもう一つの特徴がモデル角部でのパスの変更です。
今までの内壁は外壁のパスをそのまま内側へ移動したようなパスを描いていました。

新しいエンジンでは内側に行くほどRが大きくなるようにパスが生成されます。角部での応力の集中が少なくなり強度アップが期待出来ると共に、印刷時の加速度制御、ジャーク制御で有利になると思われます。

温度差による収縮補正

プリント設定に [スケールファクタ収縮補正] という項目が増えています。印刷前後の熱による収縮誤差を補正するためのものと思われます。XY軸方向とZ軸方向で設定できるようです。

今までは読み込んだモデルの大きさを変更して収縮誤差を補正していたのですが、プリント設定でも出来るようにした理由は何なのでしょう。何か違いがあるのでしょうか。未検証です。

その他の変更点

その他色々変更点があるようですが、ぱっと見で分かるものを抜き出してみました。

UIのデザイン変更

プレファレンスやプリント設定などのダイアログがデザイン変更されました。

起動時スクリーンの変更

起動時に表示される画面が変更されました。

アイコンデザインの変更

アイコンも変更です。

マーケットプレイスの刷新

マーケットプレイスのダイアログが新しくなりました。プラグインやマテリアルの追加を行う画面ですが、今のところ登録されているプラグインは以下のものだけでした。そのうち増えてくるのでしょう。マテリアルに関しては結構な数が登録されています。

2022/04/28 追記
プラグインが6つに増えていました。

バグフィックスやプロファイルの追加

いつものように多数のバグフィックスやプリンターおよびフィラメントのプロファイルの追加がなされています。気になる方は以下をご覧ください。

github-Ultimaker Cura 5.0 beta

このほかにも金属印刷の設定が実装されたとか、Ultimaker製のプリンターでのスピード向上とか、AppleのM1 chipsに対応したとか色々あるようです。英語ではありますが以下のサイトで詳しく語られています。

Get ready for a breakthrough in 3D printing with Ultimaker Cura 5.0 beta

やはりベータ版。クラッシュしました

問題点を洗い出すのが目的のベータ版ですのでバグがあって当然なのですが、私の環境では、パソコンとプリンターをUSBケーブルで繋いで印刷する際にエラーが発生するようです。途中までは問題なく印刷が進むのですが、数分後に必ずエラーで止まってしまいます。

2022/05/18 追記
5.0.0 の正式バージョンで上記のバグは解消されました。

あとがき

久しぶりにCuraに関する話題でした。可変線幅は何気にお気に入りで、4.13.1よりもArachne Engine Beta2の方をよく使っていますので、5.0正式版が待ち遠しいところです。
あと本文中で書き忘れたのですが、インストール時のコンポーネント選択が5.0-betaでは一切無くなっていました。

では、また次回。

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