分解することの出来ない一体型のヒンジを3Dプリンターで製作する際に、軸と穴にどの程度の隙間が必要なのかを検証してみます。可動部のガタや動きの軽さを評価することで、最適な隙間を見いだしたいと思います。
モデル設計
丁番(ちょうばん)蝶番(ちょうつがい)ヒンジ、と色々呼び方があるようですが、ここではヒンジで統一します。形状もいろんなタイプがありますが、今回は下図のようなヒンジとします。いつものように、fusion360で設計します。
軸をどちら側に固定するかで次のパターンもありますが、軸両端がオーバーハング形状となり、穴との隙間が大きい場合に印刷が困難と思われますので、軸がブリッジ形状のみで印刷できる方を選択しました。
二つの部品が組み合わさった状態で印刷します。
fusion360でSTLファイルに変換する際、通常一つの部品しか選択できませんが、複数個のモデルを一緒に印刷したい場合は、それらの部品を同じコンポーネントにまとめると同時に変換できるようになります。
各部の寸法です。今回の検証は、軸と穴の隙間のみとしますので、組み合わさる凸部と凹部の壁どうしの隙間は片側 0.5mm で不変とします。
軸は4mm固定で、穴の径を4.4mm、4.8mm、5.2mm に変化させ、0.2mm、0.4mm、0.8mm の3パターンの隙間で比較します。レイヤー高さを0.2mmとしましたので、このステップになります。積層ピッチを0.1mmで印刷するのであれば、もう少し細かいステップで検証できますが、普段の印刷がほぼ0.2mmですので、今回の3パターンのみとしました。
各方向の断面はこんな感じです。
設計していて思ったのですが、こういった微妙な隙間を積層方向で実現するためには、設計時に印刷の積層ピッチを考慮する必要がありそうです。穴や軸の印刷開始の高さが、積層ピッチの倍数以外のところにあると、設計意図通りの隙間とならない可能性があります。
印刷
主な印刷環境は次の通りです。
プリンター | Anycubic Mega-s |
フィラメント | Anycubic純正 PLA 1.75mm |
レイヤー高さ | 0.2mm |
ライン幅 | 0.4mm |
印刷温度 | 200℃ |
プレート温度 | 60℃ |
印刷速度 | ウォール、スキン 25mm/s インフィル 50mm/s |
印刷開始前に穴と軸の隙間部分の印刷パスを確認して設計通りの隙間になっているかを確認します。
絶妙な隙間で印刷が進みます。本当に可動するのかどうか不安になります。
印刷完了。見た目はよろしいようです。
すべての隙間で無事可動しました。
各サイズの評価
それでは、3種類の隙間の可動具合です。
隙間 0.2mm
印刷後、かなりの力を加えないと可動し始めません。工具をでつかまないと動きませんでした。(検証用モデルのため、手に持つ部分が小さすぎたことが要因です) ただ、一度動き始めて、しばらく屈曲を繰り返すとスムーズに可動するようになりました。自重で動くほど軽い動作ではありません。隙間によるガタはある程度は感じます。動きの軽さより精度を優先する場合の選択肢となりそうです。
2022/01/10 追記
記事を公開した後、何個か試作を重ねてみたのですが、可動部の固着を剥がす時に、軸と穴の隙間の溶着が強固過ぎて、軸がねじり切れる事象が発生しました。サイズ、形状、印刷条件等、何かを改善する必要がありそうです。
同日 追記
ヒンジ形状を変更した記事を公開しました。
隙間 0.4mm
印刷後、軽く力を加えるだけで可動し始めました。慣らしの動作をしなくても、自重で動くくらい軽く動きます。ただし、ガタは大きいです。使用用途次第では気になるかもしれません。精度より軽さを優先する場合はこれが良さそうです。
隙間 0.8mm
プレートから取り外す時点で可動しました。動作は軽いです。しかしガタが多過ぎです。軽さ自体も0.4mmとさほど変わりませんので、これを選択することは無いと思います。
以上にように用途によって、0.2mmもしくは0.4mmを選択するというのが今回の検証結果です。
印刷してみて気づいたこと
軸の付け根部分が、設計では直角ですが、印刷すると丸みが出てしまいます。その丸みで膨らんだ部分が穴との隙間をより狭くして動きを渋くしているようです。0.4mmの隙間では感じませんが、0.2mmでは顕著です。
端面の隙間を大きくすることでも回避できますが、その方向のガタが増えることを考えると穴に面取りをすることが現実的な解決策となりそうです。
あとがき
ヒンジ部の軸と穴の隙間について見てきました。一応の結果は出ましたが、軸の直径、ブリッジ部の長さ、使う材料、等いろいろな要因で変化すると思います。違う条件となれば結局は試行錯誤が必要とは思いますが、今回の結果である程度感覚はつかめた気がします。
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