一ヶ月程度エンジンをかけないで放置していると、エンジン始動どころか、キーのリモコンさえも動作しなくなるほど電圧降下が発生します。前回、CCAを測定してバッテリーはまだ元気であることを確認しましたので、今回は暗電流を測ってみました。適切なレンジのあるクランプメーターを持ち合わせていないので、サーキットテスターのみで測定します。
暗電流とは?
暗電流とは、イグニッションスイッチをオフにした状態でも流れる微弱な電流のことで、家電製品でよく話題になる待機電流と同意です。自動車業界がなぜ暗電流という言葉を使うかについては不明です。キーのリモコンや、ECUのメモリー保持、セキュリティ関係など、ひっそりと働いている電装品一つ一つの消費電流は僅かでも、すべてを合わせるとまあまあな量の暗電流になってしまうのかと想像します。後付けで、ACC電源以外にバッテリー電源を必要としている電装品を取り付けていれば、その分も追加されます。自分の車の暗電流値とバッテリー容量を把握しておけば、どの程度放置すれば良ろしくないのかがなんとなく見えてきます。
暗電流を測る方法
暗電流を測る方法は、使用するテスターによって二つに分類できます。
クランプ式電流計による測定
クランプ式電流計(クランプメーター)は、バッテリー近辺の電線をクランプするだけで測定できますので、バッテリーの接続を外す必要性がなく容易に測ることが出来ます。デメリットは測定機器が高いことです。そもそも、直流電流が測れるクランプメーターは、交流のみの製品に比べて高価ですし、暗電流を測るとなると、数十mA 程度の微弱な電流を精度良く測る必要があり、より高価になりがちです。
サーキットテスターによる測定
サーキットテスター(デジタルマルチメーター)で測定する際には、自動車の電気回路に対してテスターを直列に接続する必要があります。すなわち、普通に考えると一旦バッテリーからの電源を遮断する事になります。実際には、遮断しないような手順で測定するのですが、油断すれば遮断が発生してしまいます。そうなると、時計、燃費情報などがクリアされたり、パワーウインドウの自動昇降が出来なくなったりします。たいした手間ではありませんが、後で復帰操作が必要になります。そんなリスクもありますが、当然メリットもあります。測定機器が安いことです。本当に大丈夫なの?と思ってしまうくらい安いです。それなりの性能を求めると高価になりますけど、DIYでの作業程度でしたら安物で十分な気がします。
より確実に遮断を起こさせないために準備したもの
サーキットテスターによる通常の測定では、テスターリードを接触させた状態で端子の接触を外します。この時、テスターリードの接触を外さないよう注意が必要なのは先に述べたとおりです。
ただ、当然、不注意で外れることはありますし、両手が塞がれて他の操作ができません。
そこで、今回はテスター以外に鰐口クリップのついたコードと電極に接続する金具を準備しました。
接続金具は、キーホルダーなどに使われているリングを、
ラジオペンチなどで適当な形状に曲げて作成しました。
これをバッテリーのマイナス端子に引っかけて、鰐口クリップによりテスターリードと接続します。プラス側も鰐口クリップコードで接続します。
使用したテスターと注意点
OHM(オーム電機) TDX-200
今回使ったのは、安物の代表のようなマルチメーターです。
アマゾンでは1,000円強で販売されています。もちろん中国製ですけど、精度が飛び抜けて悪いわけでもないですし、販売は日本のメーカーで、ちゃんとした日本語の説明書が入っています。十分に使えます。ただ、今回の測定で注意しないといけない点があります。電流値の測定レンジです。直流電流は、2mA、20mA、200mA、10A のレンジ切替になっていて、エブリイの場合、イグニッションオフ直後には、200mAを超える電流が流れるようですので、200mAのレンジで測定するとテスター内部のヒューズ(0.2A)が切れる可能性があります。セオリー通り、より高電流のレンジから測定を開始して、測定値を確かめて低電流のレンジに切り替える必要があります。
測り方
イグニッションスイッチOFF
イグニッションスイッチをオフにして、すべてのドアが閉まっていることを確認します。半ドアだとルームランプのスイッチがオフの位置でも暗電流が増えてしまいます。エブリイの場合、バッテリーの場所が荷室下なので、テールゲートを開けて測ると楽なのですが、中に乗り込んでゲートを閉める必要があります。(半ドアでも15分程度以上放置で通常の暗電流になるようです。)
また、最近の車はイグニッションスイッチをオフにしてもしばらくの間結構な電流が流れているので、ある程度待つ必要があるようですが、エブリイの場合、1、2分程度で落ち着きますので、無駄に時間を費やす必要はないようです。
テスターの設定
何アンペア流れるか分かりません。まず一番大きなレンジで測定します。テスターのロータリースイッチを10Aの位置に合わせ、テスターリードを10Aの端子に差し込みます。
テスターリードの接続
バッテリーのマイナスターミナルのナットを緩めます。(まだ、外しません)
バッテリーコード側の適当な場所とプラス(赤)のテスターリードを鰐口クリップコードで接続します。
接続金具をマイナスターミナル下の隙間から取り付け、鰐口クリップコードでマイナス(黒)のテスターリードと接続します。
仮測定
マイナスターミナルを持ち上げた状態でテスターを読みます。
次の写真は、テールゲートを閉めた直後の電流です。260mA流れています。イグニッションスイッチをオフにした直後も同程度流れました。
30秒程度経過。170mAまで下がります。時間は正確に計ったわけではありませんのでおおよそです。
1分程度経過。100mAまで低下。
最終的にこの電流まで下がりました。10mAなのか、それ以下なのかは分かりません。
このレンジでは正確な値を読めませんので、レンジを切り替えます。
レンジ変更
マイナスターミナルを一旦戻します。テスターの読みが0mAになります。
テスターのロータリースイッチを200mAの位置に合わせ、テスターリードをmAの端子に差し込みます。
本測定
もう一度、マイナスターミナルを外し、暗電流を読み取ります。7.8mAで落ち着いています。
テスター接続解除
測定が完了したらマイナスターミナルを元に戻し鰐口クリップコードなどを外し、マイナスターミナルをしっかり奥まで差し込みナットで固定します。
注意事項
200mAのレンジで測定中にドアを開けると、電流が流れすぎますので、0.2Aのヒューズを採用しているテスターはヒューズが切れるかもしれません。また、間違ってキーのドアロックボタンを押してしまうと8A近い電流が流れますので、これは間違いなくヒューズが切れます。
測定結果
私のエブリイの暗電流は7.8mA であることが判明しました。悪くない数値です。ただ、純正バッテリーの20時間率での容量は32Ahで、一ヶ月でバッテリーが上がるという現実の症状と辻褄が合いません。一ヶ月放置で放電終止電圧になるには44mA程度の暗電流が必要です。実際には8Vまで降下していましたので、これ以上が流れた計算になります。ちなみに今回測定した暗電流で放電終止電圧に達するには170日かかる計算になります。ということで、バッテリー上がりの原因が分からないままです。もうしばらく様子を見ます。
ちなみに、暗電流の適正範囲について調べてみましたが、例によって意見は様々でした。10mA程度とするサイトがあったり、一般的に30mA以下だよってとこもあるし、最近の色々付いている車両は50mAくらいは大丈夫?みたいな意見もあるし、もう何が正解だか分かりませんが、エブリイのバッテリー容量であれば、10mA程度までが適正だと思います。
電源遮断時の影響
エブリイの場合、測定時のミスで電源が遮断された場合に何がクリアされるのかを書いておきます。
- 平均燃費
- 航続可能距離
- 運転席のパワーウインドウの自動昇降
- オーディオの時計(純正ではありません。パイオニアのFH-9400DVS)
以上に影響があるようですが、ありがたいことにエブリイは瞬間的な電源断ではクリアされないようです。平均燃費、航続可能距離については5秒程度なら大丈夫みたいですし、パワーウインドウの自動昇降についてはもっと長い時間大丈夫で30秒位切断してもクリアされていませんでした。
なお、パワーウインドウの自動昇降が出来なくなったときは、一旦窓を下げて、スイッチの二段目(自動昇降の位置)で窓を上げて、完全に閉じた状態から更に2秒程度スイッチを保持しておくと自動昇降が可能な状態になります。
あとがき
暗電流を測定してみましたが、残念ながらバッテリー上がりの原因を掴むことが出来ませんでした。一ヶ月も放置しないで定期的に乗れば良いわけですけど、コロナとガソリン高騰で自分の中での不要不急の範囲が広がってきている感じです。気軽にお出かけできる日はいつになることやら。
では、また。
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