サイドスタンドスイッチを取り外す。 セロー250 ファイナル

serow メンテナンス

あるあるカスタムネタですけど、サイドスタンドスイッチを取り外しましたというお話です。キャンセラーについては、外したスイッチの配線をカットしてカプラーを再利用する手もありますが、カプラーを含めて、ノーマルに戻せるようスイッチを置いておきたいので、カプラーを購入してキャンセラーを製作します。必要な材料、工具、そして作り方を詳しく解説しています。また、全体の配線の中の何処を触ったのかを理解できるように配線図についても見てみようと思います。


スイッチの取り外し

取り外しの邪魔になりそうなサイドカバーとフレームガードを取り外しました。 

スイッチ横のフレームのカバーを外します。
こちらが今回のターゲット。サイドスタンドスイッチ。

フレームにスポット溶接で止めてある薄い板金を曲げてケーブルの固定を外します。細めのマイナスドライバーでこじると簡単に曲がります。

奥側はフリーなので簡単に曲がります。
ある程度開けたら隙間からコードが抜けます。

外すべきカプラーは、スターターモーター後方上部の配線カバーの中にいくつかのカプラーがあり、その中のどれかですので、スイッチ側から配線を辿っていってカプラーを特定します。奥の方でまともに手の入る場所ではないのですが、私の車両では一番下の比較的外しやすい場所にありました。それでも手は届かないので、細めのマイナスドライバーで爪を押しながらケーブルを引っ張って外すことが出来ました。

カプラーが無事外れましたら、スイッチ本体のボルトを緩めて取り外します。

カプラーが抜けたところ。
サイドスタンドスイッチを外したところ。スイッチを押すメッキのプレートが目立ちます。

思ってたよりずっと重いです。106g。
買っておいたカプラーが本当に同じものなのか不安だったのですが、どうやら間違いなかったようです。

小さい割に結構しっかりとしたスイッチです。
左が外したカプラー。購入品と全く同じでした。

スイッチキャンセラーの作り方と装着

キャンセラーに必要な部品がこちらです。ゴム栓とターミナルが大量にありますが、これは、今までに装着してきた電装品を防水カプラーに変更する計画がありますので、まとめて購入しました。

圧着工具も手持ちのものでは、サイズ的に無理のようなので購入しました。

では、作業の手順です。ゴム栓を通し先端の被覆を4~5mmくらい剥きます。利用したコードは0.5sq(直径0.8mm)のものです。配線図上での位置的には黒色かなと思ったのですが、1.25sqという太いのしか手持ちがなかったので、やむなく赤で作成しています。なお、ゴム栓の内径は1.5mmです。0.5sqコードの外径が1.9mmくらいで、一応、ゴムを押し広げながらの挿入なので、防水は問題なさそうです。ちなみに1.25sqのコードは外径が2.7mm程度あり、かなりきついですが、なんとか入ります。

ゴム栓を入れる順番は、被覆をむいてからでも問題ありません。ただし、これより太い線では、先に剥いてしまうと、挿入時に銅線がバラけるかも。
0.5sqのコードを使いました。直径は0.8mmです。

銅線部分を圧着します。その後、ゴム栓を所定の位置に移動させます。

0.5-0.85の位置がちょうど良いようです。
銅線圧着完成。ただ、圧着部左側の赤い被覆がもう少し右だと良かったかも。銅線見え過ぎ。

先端の丸い形状の圧着部でゴムの周りに沿わせます。

締めすぎるとゴムの変形が気になります。
圧着完了。

走行中にもしこの接続が外れると、エンジンが停まってしまうので、とにかくリスクが少なくなるように圧着部先端をはんだ付けしました。外したスイッチのターミナルと比較してみると、当然ではありますが、ほぼ同じです。なんとなく安心。

はんだ付け。圧着部左側は被覆とゴムが熱で変形しそうなので止めときました。
色以外、ほぼ同じ。

片側が完成したので、ゴム栓端から約27mmで切断、反対側を製作します。コードの長さが短いので、ターミナルの向きをなるべく揃えておかないと、ハウジングへの挿入時に、コードに無理な捻りが発生します。

ゴム部分に防水用のグリスを塗っておきました。外したスイッチのカプラーに塗ってある気配がありましたので、急遽真似をした次第です。

シリコングリスをぬりぬり。塗り過ぎかも?
むかーし、オリンパスのカメラ用に買ったもの。

ターミナルを差し込む時の上下の向きは間違うと挿入できないようになっています。カチッと音がするまで差込みます。

スイッチキャンセラー完成です。

後は、差し込むだけなのですが、素手では届きそうもないのでラジオペンチで挟んで挿入しました。奥まで入れるとカチッと音がします。キャンセラーにOリングが当たる部分へ防水用グリスを塗っています。

ラジオペンチでそっと挟んで、カチッと音がするまで差込みます。

スイッチが付いていたところのネジ穴が何か寂しいので、ヤマハプレートを作って差し込んでみました。いつもの3Dプリンター製です。

幅42mm、高さ12mm、厚さ3.6mm。裏に差し込み用のピンあり。

エンジンがかかるかどうか確認して完成です。


配線図を理解しておこう

オートバイや自動車の電装系のこういった改造をするときに、どんなリスクが有るのかなどを理解しておかないと不安なので、ネット上の情報を鵜呑みにすること無く、いつも必ず配線図の確認をしています。今回のサイドスタンドスイッチは、ある条件で、スパークプラグの点火をカットする回路と、スターターモーターを回らなくする回路のふたつに関わっています。サービスマニュアルを購入しておくと全体の回路図や上記の個別の回路を抜き出した回路図などの情報を得ることが出来ますので、購入をお薦めします。以下に回路図を掲載しておきますので、興味のある方は御覧ください。


点火系統でのサイドスタンドスイッチ

エンジンが動いていて、ギアがニュートラル以外の時にサイドスタンドが下がるとエンジンが停止します。クラッチスイッチのON、OFFは関係ありません。ニュートラルの状態でサイドスタンドを出したままエンジンを始動し、さあ、スタートしようと思って、クラッチ握ってギヤを入れた途端にエンジンが止まるので、サイドスタンドを出したまま走行することを防ぐ安全措置として働きます。
ECUからメインスイッチへの線(図中の1)の電位がグランドの状態の時にのみ、イグニッションコイルからの電流がECUに流れ(図中の2)スパークプラグに点火されます。したがって、ニュートラルである(ニュートラルスイッチがON)か、サイドスタンドを格納している(サイドスタンドスイッチがON)かのどちらかもしくは両方の場合のみエンジンが動き続けることになります。

改造前の点火系統の回路図。ECUへの給電回路は省いています。

上図の回路図では、今回、何処に改造を加えるのかが解りにくいですが、サイドスタンドスイッチの部分を実態に近い配線図に書き直すと下図のようになりますので、理解しやすいと思います。

サイドスタンドスイッチを取り外すとOFFの状態と同じになりますので、
スイッチキャンセラーにてONの状態にします。

始動系統のサイドスタンドスイッチ

メインスイッチおよびエンジンストップスイッチがONの状態で、スタータースイッチを押したときに、スターターモーターが作動するためには、少なくとも次の条件のひとつが必要になります。

  • ギヤをニュートラルにする。(ニュートラルスイッチがON)
  • クラッチレバーを握っていて、かつ、サイドスタンドが格納されている。(クラッチスイッチ、サイドスタンドスイッチがON)

この条件は、ギヤが入った状態でスターターモーターが回り車両が動いてしまうことを防ぎます。ギヤが入っていてもクラッチを握っていれば車両は動きませんが、サイドスタンドが出てギヤが入っている状態は、点火系統のエンジン停止の条件になりますので、スターターモーターは回らないようになっています。

回路図的に言えば、スターティングサーキットカットオフリレーがONになるためには、”ニュートラルスイッチ” または ”クラッチスイッチとサイドスタンドスイッチ” のどちらかまたは両方がONになる必要があります。


両系統のマージ

サービスマニュアルには系統別の回路図が掲載されていますが、任意の系統間をまとめた回路図はありません。これだと系統間の繋がりが解りにくくなります。繋がりを見ようと思えば、全体の回路図がありますが、範囲が広すぎて把握するのが難しくなります。ということで、点火系統と始動系統のうち、今回のサイドスタンドスイッチが絡む部分の回路図を作成してみました。他の系統との繋がりを省いているため、よくよく見ると理解できない部分もあるかと思います。例えば、ダイオード2はなぜいるの?とか。これは、ニュートラルランプの回路がニュートラルスイッチに繋がっていて、この関係でギヤが入っている状態ではスイッチ部の電位が12Vとなるためです。と、疑問なところも残りますが、とりあえず、サイドスタンドスイッチ絡みのことはこの図でわかると思います。

点火系統と始動系統の回路図。多分間違ってないと思いますが、もし、間違いがありましたらご指摘ください。

2022/08/22 追加
当記事のコメント欄にて「上図のダイオード2の存在理由を知りたいです」といった問い合わせがありました。確かにこの図のみでは、なぜ必要なのかは分からないですね。悩ませてしまって申し訳ありません。ということで下図を追加します。省略していたニュートラルインジケーターランプの回路を追加しています。これでおそらく理解して頂けるのではないでしょうか。

メーターにあるニュートラルインジケーターランプの回路を追加してみました。

購入したもの

最後になりましたが、今回の作業で購入、利用したもののリンクを掲載しておきますので、気になる方はチェックてみてください。導入部でも触れましたが、外したスイッチの線をカットして短絡し、カプラーを再利用するのであれば、何も購入するものはありません。また、既に述べましたように今回は防水カプラー化計画があったので、いろんな極数のカプラーを買い込んでいます。その中で今回使ったのは以下の商品です。(楽天サイトの商品にリンクされています。)

HERO/ヒーロー 圧着防水配線ターミナル/2極 防水ハウジング(オス):FRS-107N(1袋/5個)

HERO/ヒーロー 圧着防水配線ターミナル/ターミナル(メス):FRS-102N(1袋/50個)

HERO/ヒーロー 圧着防水配線ターミナル/ゴム栓:FRS-103N(1袋/50個)

何か他に使う予定のない方にとっては大量すぎて参考になりませんよね。1セットの販売はアマゾンのサイトに有るようです。

ただ、結構な価格が設定してあるので、結局、完成品のこちらを購入したほうが安いという話になります。

送料はかかりますが、1個単位で購入する場合はこちらも選択肢に入るかもしれません。
ただ、私自身、ここの製品を購入したことがなく、同じ住友電装の製品なので互換性があると思っているだけなのかもしれません。

090MT防水 auto-eparts

2021/08/20 追記
先日、他の用途用に090MTシリーズをauto-epartsさんから購入しました。カプラー本体、端子、ゴム栓すべてFRSシリーズと互換性があるようです。ただ、こちらの2極カプラーにはロック方式により3種類あります。FRSシリーズと適合するのは、インターロックタイプです。


ターミナルのサイズが小さいため、手持ちの工具で圧着できないようなので、適用工具として推奨されているFRH-07を購入しました。



ワイヤーストリッパーで細い線も剥けるものをお探しの方はこちらが結構おすすめです。切れ味抜群で圧着工具におまけで付いているものには戻れません。

コメント

  1. krichards より:

    お世話になります。自分の愛車はSR400ですがギアがニュートラル、停車後サイドスタンドを立てたときに時々エンストする現象の原因を理解しようと調べていてこちらのサイトを見つけました。多分ニュートラルスイッチかダイオードの部品交換で改善できるだろうと予測しておりましたが理屈を理解したくこちらのサイトで勉強させて頂きました。1点ご教授頂きたいのですが冒頭の「改善前の回路図」ではニュートラルスイッチ側のみダイオードがありますが2枚目、3枚目の回路図ではサイドスタンド側にもダイオードが書かれています。サイドスタンド側にダイオードがある意味がどうしても理解できません。よろしければご教授いただけませんでしょうか。

    • rimo rimo より:

      krichards 様
      コメントありがとうございます。
      管理人のrimoです。

      krichards様のコメントを機に改めて記事を読み直してみましたが、何とも分かりにくい言い回しをしているなと反省しております。
      また、ダイオードを書いたり書かなかったりで一貫性のない事をお詫び申し上げます。
      で、ダイオードの必要な理由ですが、コメント欄で説明できる気がしませんので、改めて記事にするか、この記事に追加するか、など何らかの方法で図を交えて説明しようと思います。
      いつになるか分かりませんが、しばらくお待ちください。

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